東京文京区の根津神社

1.白山駅から根津神社へ

根津神社には、都営三田線白山駅から行きました。途中で道を間違えてしまいましたが、それでも進む方向は間違っていなかったようで、しばらく歩いていたら日本医大前の信号に差し掛かりました。近くに文京区の旧町名案内があり、「旧 根津西須賀町(昭和40年までの地名)」と書かれています。この案内板を見て、根津神社に近づいていることがわかってほっとしたと同時に、文京区の歴史を一つ勉強させていただいたような気になりました。文京区にはこのような旧町名案内があちこちにあり、区のこの取り組みには個人的に好感が持てます。
神社に着くと、まず大きな石造りの鳥居に圧倒されました。鳥居の向こうには広い参道が見えます。これだけでも、根津神社がかなりの格式を持った神社だということがうかがえました。

 

2.はじめに末社から

私が着いたところは表参道ではなく裏門でした。末社が近くにあったので、まずそこからお参りし、その後改めて拝殿に向かうことにしました。
はじめに駒込稲荷にお参りしました。社殿は境内末社でありながら立派な構えです。参道の両側にはそれぞれ岩があり、岩の上や中腹に狐の石像がありました。今にも動き出しそうな狐の姿は、何ともかわいらしかったです。
駒込稲荷をお参りした後は、乙女稲荷に向かいました。途中にある塞の大神碑は明治時代の初期に別の場所に建てられたもので、その後根津神社に移されて現在に至っているそうです。江戸時代からの歴史的背景についてふれている解説は、読んでいて非常に興味深いものがありました。
更に少し進むと、石像と石板を組み合わせたような、ユニークな形の石造物がありました。庚申塔です。解説によれば庚申塔は合計6基あって、江戸時代前半ごろにそれぞれ別の場所で建てられましたが、明治時代に道路拡幅などを理由に根津神社に納められたそうです。背景事情を知って、ユニークな歴史がユニークな形を生み出しているような気がしました。

 

3.乙女稲荷と家宣公胞衣(えな)塚

次に石造りの鳥居をくぐり、朱塗りの鳥居が延々と立ち並ぶ参道をひたすら歩きました。鳥居をいくつもくぐると、途中で石造りの狐が左右から出迎えます。そして更にたくさんの鳥居をくぐった先が、乙女神社の社殿です。社殿は朱塗りの柱と白の壁とのコントラストが鮮やかで、境内末社とは思えないくらいしっかりした建物です。しかも掘割の水際に張り出すような形で建てられているので、少し遠くから見るとなかなか趣があります。
御祭神を拝んだ後は、またもや多くの鳥居をくぐりました。少し歩くと、六代将軍徳川家宣公の胞衣塚があります。一見すると、大きめの石がただ並んでいるだけです。でも解説によると、昔は胞衣(胎児を包んだ膜と胎盤)を床下などに埋める風習が各地にあり、上流階級では胞衣塚を築くこともあったそうです。そもそも私は風習どころか、胞衣の正しい読み方や、何を指すのかも知りませんでした。また一つ勉強させていただいたと同時に、古い風習の跡が残っていることに感心させられました。

 

4.ようやく拝殿へ

胞衣塚に寄った後は細い参道をさらに歩いて、どっしりした造りの楼門の横に出ました。そして表参道口の鳥居に向かって参道を歩き、いったん境内の外に出て、改めて神社をお参りすることにしました。
表参道口から見た鳥居はくすんだ赤色で、格式の高さをうかがわせるような存在感があります。これに畏敬の念のようなものを感じた私は、一礼してから境内に入り直し、参道を歩いて神橋を渡り、今度は楼門をくぐりました。
その後は手水舎で手を清めて、さらに唐門をくぐって青銅の灯篭を左右に眺めてから拝殿へ向かいます。唐門では、職人が漆を塗り直す作業をしていて、参拝者に向けた注意書きがありました。そうした光景を目の当たりにすると、建物を維持・保存していこうとする姿勢と、その大変さが垣間見えたような気がします。
ようやく拝殿に着きました。格式ある神社の中心的な存在であり、国の重要文化財に指定されているだけあって、重厚かつ壮麗な建物です。今回はある意味で変則的な形のお参りでしたが、それでも拝殿に着けたことに感謝し、御祭神を拝みました。

 

5.お恥ずかしい余談ですが…

実は私は2015年6月に白山神社へ行くまで、根津神社と白山神社の区別がつきませんでした。どちらも東京十社に数えられているうえ、地理的に近いからです。
根津神社と白山神社の間は、歩いて15分くらいの距離です。おまけに自宅からどちらの神社に行く場合でも下車駅は同じで、都営三田線の白山駅になります。根津神社には東京メトロ千代田線の千駄木駅・根津駅、東京メトロ南北線の東大前駅からも行けますが、そうした駅は自宅からのアクセスが悪いのです。
白山神社に行こうと思ったきっかけは、テレビであじさい祭りが紹介されていたことでした。でも実際に行く段階になって、あじさい祭りがあるのは白山神社なのか根津神社なのか、何度も確認したくらいです。行ってみて初めて、「白山神社ってこんなところ」と認識できるようになりました。
そして今回根津神社に行って、はっきり区別がつけられたという実感が持てました。地理的に近くても、2か所の神社は全くといってよいほど雰囲気が異なります。個人的に受けた印象として、白山神社からは潤いや情趣といったものが感じられました。一方根津神社からは、壮麗さや格式の高さが感じられます。

 

By PingPongBooks 2015/9掲載

 

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