遍路 四国八十八ヶ所巡礼 体験記

巡礼2日目 2001年3月7日(水) 曇 21番〜31番 (徳島3+高知8=11)


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巡礼2日目、最初のお寺は四国霊場4番目の高さ(610m)にある“二十一番札所 太龍寺”。「気分爽快にお遍路2日目、行っときましょう!」と車を降りるものの、駐車場から延々と続く登り階段に体力も気分もだだ下がりです。朝一からの登山?は足がガクガクして、昨日使った筋肉が軋んでいます。昨夜の薄気味悪さが幻だったかのごとく、夜明け独特の冷気と山頂近くの静謐さが気分を少しだけ良いものにしてくれます。30分をか...

遠くからドタンバタンと音をさせながら、ものすごい勢いで若い修行僧らしき僧侶が来てくれました。「おはようございます。ご苦労様です。」とご丁寧に挨拶をしてくれて、納経帳に墨で記帳してくれています。『息切れていますが大丈夫ですか?』と思いながら観察。『さっき起きましたって顔をしていますね。でも、きちんと着物は着ていらっしゃるんですね。早くからすみません。』と脳内で。するとお年をめされたお坊さんが一人来ら...

ご住職らしき人が「おはようございます。早くからご苦労様。どちらから?」と聞かれて返答をしながら会話していると、納経が済んだようです。若い僧侶が納経帳を私に手渡そうとした瞬間、ご住職がそれを手に取って確認。『一瞬、眉間に皺が寄りましたよ。若い僧侶を見るその咎めるというか、呆れた目は何?』と思っていると、一転、笑顔で「お気をつけて。」と言いながら閉じた納経帳を私に返してくれました。「ありがとうございま...

ウミガメの産卵で有名な徳島県日和佐町。海岸のすぐ近くにある “二十三番札所 薬王寺”の朱色と白のコントラストが美しい“瑜祇塔”は遠くから目を惹きます。あまり記憶には残っていませんが、小さい頃に父の厄除けのお参りに来たことがあります。薬王寺は厄除けのお寺。父が厄払いのために階段に1円玉を“落として”いくのを見て「私も!」と散々駄々をこねたのに、させてくれなかった?かどうかは分かりませんが、涙ながらに...

お賽銭は“奉納する”という表現をしますが、“厄を落とす”と考えると司馬遼太郎の“1段のぼるごとに1枚ずつ1円アルミ硬化をおとしてゆく”にある “おとす”という表現が、厄除けの寺“薬王寺”だからこそしっくりくるように思います。四国八十八ヶ所巡礼の準備品の一つに、お賽銭があります。家に眠っている硬貨は引出の中やバックの底など、意外にたくさんあるものです。出発前に家中の硬貨(1・5・10・50・100円...

日本人なら一生の内で1度は口にすることがあるはずの、「たかが1円。されど1円。」賽銭袋いっぱいに唸るほどあったお賽銭ですが、厄坂の30段目辺りにさしかかった頃、賽銭袋に1円玉が見当たらないではないですか!賽銭袋の中はアルミ色ではない、1円玉以外の硬貨だけです。『あんなにあったのに・・・車まで行けばまだ少しお賽銭があるけど、今更戻るのも面倒だし再度登ってきてここから始めるのは厄落としとしての効果はど...

薬王寺は徳島県最後のお寺。まだ23番目です。あんなにあったお賽銭も随分少なくなりました。いきなり減ったお賽銭袋を見ると心許なくなります。『どこか銀行で両替しないと行けないな。』と思いながら本堂、大師堂へお参りを済ませて納経所へ行っていると、1円玉の両替があるではないですか!なんと硬貨2枚(150円)で、1円玉150枚(個別包装3本)を手に入れたのです。厄坂を下りながら『100円玉で厄を落とす。と言...

“二十三番札所 薬王寺”を最後に“発心の道場”を打ち終えて、高知県“修行の道場”に入ります。室戸岬にある“二十四番札所 最御崎寺”までは約75q。車で2時間弱の行程です。海原の遙かかなた向こうにある水平線、太平洋の壮大さに心奪われそうになります。目の前にあるのは延々と続く、海岸沿いの崖を切り崩した2車線道路。岬を越えると、また次の岬を回るまで白波が寄せては引いていく海岸を見ながらひたすら走ります。...

高知県両端の東側にある大きな岬のひとつ、室戸岬。室戸岬の少し手前には、弘法大師が修行して悟りを開いたと伝わる“御厨人窟”と呼ばれる岩屋があり、この洞窟から眺めた空と海に感銘を受けて“空海”という名を弘法大師自ら付けたという説もあります。車窓から見る空と海は本当にすばらしい景色ですが、窓を開けると吹き付けてくる風や、崖下に打ち付ける波とその音に自然の厳しさを感じます。室戸岬を回り込んで室戸スカイライ...

“二十四番札所 最御崎寺”から、いよいよ“修行の道場”巡礼スタートです。室戸岬から西の高知市へと向かっていきます。“二十五番札所 津照寺”の山門に到着した瞬間「マジ?」という言葉が漏れます。凄まじく急勾配な石階段が、まっすぐ上に伸びています。上に見えるのは“鐘楼門”、別名“仏の灯台”とか。『仏さんって灯台がなかったら迷うもんなん?ていうか、私この灯台、近寄るべからず。急階段注意。って認識かも。』と...

“二十八番札所 大日寺”のまたも見上げる階段に意気消沈するものの、この地域には何度か訪れたことがあって、楽しかった思い出や見たことのある風景、少し知っている場所にホッとして気分が楽になります。のいち動物公園や龍河洞の看板、山の上に見える古城風の建物。車の免許を取ってすぐの頃、友人と旅行に来たのを思い出して笑みがこぼれます。古城風の建物の横に、ほのぼのとした遊園地がありました。職員はお爺ちゃんとお婆...

あんなにほのぼの気分で絶好調だったにもかかわらず、南国市内に入ると気分は一変して絶不調へと落ちていきます。向かうは“二十九番札所 国分寺”。看板は見えます。地図も見ています。なのに行き着けない・・・同じ道を何度も往復して探すのですが、国分寺がないのです。この巡礼で、始めて迷いにまよっています。気分が沈むと悪魔がささやくのです。『止めればいい。こんなに頑張ったんだから。ここからなら2時間もあれば家に...

午後3時過ぎ、お茶時間を楽しむ姦しい小綺麗なおばさまたちに囲まれる中、ひとりボーッとコーヒーを飲みます。高知県に入ってすぐの頃は目の前にある道を進むだけでお寺に着けたのに、市街地に来ると横道がたくさんあって、入っていく道が分からず到着できないのです。張り詰めていた心が、休憩をしていると少しずつほぐれてきます。帰り際に店員さんに「国分寺はどう行けばいいですか?」と訪ねれば、親切に教えてくださいました...

国分寺の金剛力士像にガンを飛ばしたのが良くなかったのか、“三十番札所 善楽寺”にまたも辿り着けない・・・『ごめんなさい。もう八つ当たり気味に睨みつけたりしませんから。』と涙目になりながら反省します。車は便利ですが、15分も走れば結構な距離を稼いでいます。違う方向に行けば目的地から随分と離れて、あさっての場所で彷徨っているのです。道を歩いている人にお寺の場所を聞いてみると、丁寧に教えてくれました。ど...

午後5時少し前に高知市内の五台山山頂にある“三十一番札所 竹林寺”に到着。本日最後のお寺も目の前に見えるのは本堂ではなくて石段だけです。時間がないので息を切らしながら階段を上って、お参りと納経を済ませます。今日はこれで打ち止めなので、境内で一際目に留まる“五重塔”を見上げます。圧巻です。かつてあった三重塔が倒壊したために、1980年に再建された鎌倉時代初期の様式を持つ総檜造りの五重塔は、31mほど...

巡礼2日目は徳島県21〜23番、高知県24〜31番までの11ヵ寺の巡礼でした。嫌というほど迷ったので、このまま明日朝一の“三十二番札所 禅師峰寺”まで行って、道を確認してから泊まるホテルを探すことにします。今日は肉体的にも精神的にも、とても疲れました。睡眠不足のうえに、仰ぎ見るほどの階段の連続で足はふらふらです。そしてお寺に辿り着けずに同じ場所をぐるぐる廻ったり、違う場所で彷徨ったりと気力が萎える...