慈恩寺

「しんちゃん」あるいは「らき☆すた」の空気

同じ埼玉県でも、川口・浦和・大宮など京浜東北線沿線と、春日部・越谷など東武スカイツリーライン沿線では、流れている空気が違うように感じます。春日部や越谷には、浦和や大宮にないのんびりした雰囲気があります。その雰囲気は、春日部を舞台としたマンガの「クレヨンしんちゃん」や「らき☆すた」にもよく表れています。さて慈恩寺の境内に隣接する駐車場に車を止めて降りてみると、住所はさいたま市でありながら、同じ市内の浦和や大宮とは明らかに異なる空気を感じました。「しんちゃん」や「らき☆すた」に流れている空気と同じものがあるのです。この理由はたぶん、慈恩寺が春日部に近いからなのでしょう。

 

村の古刹

慈恩寺の周囲は田んぼや雑木林が多く、ところどころに住宅や学校があるような感じです。かつての農村を思わせるような風景です。境内は道路に面していますが、お寺と道路の境に塀や生け垣がありません。道路から境内の様子を一望すると、かつて村の中心的な役割を担った古刹といった感じで、田舎の開けっ広げな雰囲気がにじみ出ています。山門に貼られた数々の千社札からは、歴史の古さが表れています。本堂の大きな瓦屋根や、鐘楼の柱などからも、新しく再建された寺院とは違ったひなびた味わいがあります。

 

玄奘塔

本堂にお参りしてから、数分ほど歩いて玄奘塔へ行くことにしました。玄奘塔は境内から少し離れていて、雑木林の向こうに塔の先端が見える程度です。舗装された道路だけを通って境内から玄奘塔へ行こうとすると大回りすることになりますが、近道しようとすると田んぼのあぜ道を通ることになります。さて大回りして玄奘塔に着くと、鮮やかな朱塗りの門が目に飛び込んできました。玄奘塔にはこの門と三蔵法師の像と十三重の石造りの塔があって、インド風の造りが周囲とは明らかに異なる空間を形成しています。

 

対照の妙

そもそも私は玄奘塔に来るまで、「西遊記」に出てくる三蔵法師が実在の人物だったとは知りませんでした。「西遊記」はストーリーがとても長く、テレビドラマ化されても全体像がつかめないままでしたが、機会があれば改めて読んでもよいのではないか、と思いました。それにしても、三蔵法師の霊骨がよく見つかって慈恩寺に分骨・奉安されたものだと、ただ感心させられるばかりです。ひなびた本堂や山門と、明るい色合いでエキゾチックな玄奘塔には、慈恩寺における対照の妙といえるものを感じます

 

まるで地方都市

帰りに車で岩槻の中心部を通ったら、「ここは本当に浦和や大宮と同じさいたま市なのか?」と改めて驚かされました。歴史の古さを感じさせる一方で、どこかさびれた感じのするあたりが、まるで地方都市なのです。岩槻には慈恩寺という古刹があって、城下町、そして日光御成街道の宿場町として発展してきた名残もあります。川越の蔵造りの町並みのように人工的にする必要はありませんが、せめて古い町並みに少し手を加えて、観光客にアピールするような仕掛けができればよいと思いました。そうすれば岩槻の特徴がもっと生きてくるし、町おこしにもつながるような気がします。

 

Dec 2016


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慈恩寺で除夜の鐘をつきました
最初の一回は和尚さんがつき、その後108回を一般の方が一人1回500円で除夜の鐘がつけるというのです。何しろ初めてのことでしたので勝手がわからず、10時30分くらいにお寺に行くと