1.畠山記念館から歩いてみる
高野山東京別院には以前に行ったことがありますが、改めて足を運んでみたいと思っていました。そこで畠山記念館で「茶の湯のうつわ」を見た後に立ち寄ってみようと決めたのです。
畠山記念館から細い道を通って国道1号線に出たら、左に曲がって明治学院の交差点まで歩きます。そこを右に曲がり、高輪警察署の交差点を右に曲がると、すぐに高野山東京別院の立派な山門が見えます。山門自体もさることながら、その脇にある「御府内八十八ヶ所 第壱番」と刻まれた古い石柱からも、お寺の風格が感じられました。
畠山記念館から高野山東京別院までの所要時間は約10分。後で調べてみたらもう少し近い行き方もあったようですが、それはともかく、白金台の畠山記念館から意外と近いことがわかりました。
2.お砂踏
み山門をくぐるとすぐに、右手の石造物が目につきました。四国八十八ヶ所霊場を模した、お砂踏みです。全体が4つに区切られていて、それぞれの区画は発心之道場(阿波国)、修行之道場(土佐国)、菩提之道場(伊予国)、涅槃之道場(讃岐国)を表しています。区画の中には、その国にある札所の番号と名前を基壇に記した仏像が並んでいて、札所の所在地を示した地図もありました。例えば阿波の区画なら、阿波にある札所を記した仏像と、阿波国の地図がある、といった具合です。
このお砂踏みは、とにかくユニークでインパクトがありました。私は他の真言宗の寺院でお砂踏みを見たことがありますが、これほど規模が大きく、凝った作りのお砂踏みを見たのは初めてです。
3.多くの信徒に支えられ、多くの参拝者を集める
お砂踏みを散策した後は、すぐそばにある弘法大師の像を拝みました。像の足元には賽銭、だるま、みかん、日本酒、ペットボトルの飲料などが供えられていて、さまざまな人が思い思いに拝んでいる様子が伝わってくるようです。
次に圓融塔へ向かいました。中央にそびえる大きな石塔が目立ちます。建立の趣旨はよくわかりませんでしたが、塔の後ろの石版に記された名前から、多くの熱心な信徒に支えられていることがうかがえました。塔の右横に並んでいる地蔵像がかわいらしかったです。
弘法大師像や圓融塔の周辺には、個人や団体が寄進した樹木や岩石などが割と目につきました。こうしたところからも、高野山東京別院が多くの信徒に支えられ、多くの参拝者を集めている様子が感じられます。
4.明神社
次に足を運んだのは、圓融塔の左隣にある明神社です。真新しい鳥居の先には、やはり真新しい社殿が4つ並んでいます。右から順に、第一殿と第二殿には高野山の四社明神、第三殿には高野山の周囲を守る神様、そして第四殿には東京別院の氏神社のご祭神が祀られています。
解説によると、かつては東京別院に明神社がありましたが、明治時代の神仏分離令により排され、平成27(2015)年に高野山開創千二百年の記念事業の一環として再建されたそうです。このようないきさつから明神社の鳥居や社殿は新しいですが、弘法大師の時代から神仏の両方を大切にしてきたことが今に伝わってくるように思いました。
明神社の後は不動堂にお参りし、その後遍照殿に向かいました。
5.荘厳な空間
私が行ったとき、遍照殿の周辺では工事が行われていて何かと賑やかでしたが、建物の中に一歩足を踏み入れると、周囲の喧騒を忘れてしまうほどの荘厳な空間が広がっていました。室内はほの暗く、いすがたくさん並べてあってホールのような感じです。前方中央には弘法大師の大きな像が安置されていて、手を合わせて拝まずにはいられませんでした。
拝みながら私は、国内外の教会の中に入ったときと同じような、敬虔な気持ちになっていることに気づきました。その気持ちはまさしく宗教が人の心に作用した結果であり、教義や地域を超えた普遍的なものではないか、と思います。
遍照殿を出たら、一気に現実に引き戻されたような感じになりました。そして気持ちを切り替えて寺務所や鐘楼の当たりを散策し、高野山東京別院を後にしました。
Lisa Aoki Feb 2018