赤塚氷川神社

新緑の時期に

高島通りのイチョウ並木や、高島平団地のケヤキ並木を通って、車で赤塚氷川神社へ向かうことにしました。高島通りは個人的にお気に入りのドライブコースの一つで、特に新緑の中でのドライブは気持ちがいいものです。
神社の近くのコインパーキングに車を止めて、一の鳥居へ向かいました。わざわざコインパーキングに…と思う向きもあるかもしれませんが、赤塚氷川神社には駐車場がないので仕方のないことです。公共交通機関を使うと、かえってお金も時間もかかってしまいます。地方の神社仏閣で有料の駐車場に車を止めるのと同じことだと割り切りました。
参道ではイチョウやケヤキ、ムクノキの新緑が芽吹いて、夏とも冬とも違った、4月後半ならではの風景を作り出しています。境内の様子がどうなっているのかと期待しながら、一の鳥居をくぐることにしました。

 

一の鳥居から参道を歩く

一の鳥居は古い石造りで、扁額には「氷川神社 御霊神社」と併記されていて、2本の柱の片方には「天下泰平」、もう片方には「国土安全」と刻まれていました。鳥居には寛政七(1795)年の銘があり、旧上赤塚村の鎮守としての歴史がうかがえます。
鳥居を入ってすぐ左手には、庚申塔、青面金剛像と宮前不動尊がありました。庚申塔は見るからに古そうな感じでしたが、新しい柑橘が供えられていたので、今でも大切にされていることがわかります。庚申塔にも一の鳥居と同じく「天下泰平」「国土安全」の文字が刻まれていました。
この後は二の鳥居まで、板橋区の文化財(天然記念物)に登録されている参道並木をのんびり歩きました。新緑の並木道は開放感があり、余計なことを考えずに歩いていると心が癒されるような気がします。

 

二の鳥居を過ぎて

二の鳥居は朱塗りで、一の鳥居よりもずっと新しいです。こちらの扁額にも「氷川神社 御霊神社」と2つの社号が書かれていました。しかしながら境内の解説によると、御霊神社の由緒は不詳だそうです。二の鳥居の傍には富士塚がありますが、富士塚は後で見ることにして、先に拝殿へ行くことにしました。
二の鳥居を過ぎると樹木の数が増え、周囲の雰囲気もガラリと変わって厳かさに満ちあふれます。また参道の両側には玉垣が並んでいて、玉垣の内側は神聖な地だということがはっきりわかります。拝殿の近くで咲いている八重桜はちょうど満開で、境内の厳粛さに彩りを添えていました。
二の鳥居と拝殿の間にはさまざまな石碑がありました。朱鳥居改築記念碑、社務所改築記念碑、敷石紀念碑(実物にはこのように書かれています)、日露戦役紀念碑(同)といった石碑は、明治以降の神社の歴史を物語っているようです。

 

不思議で神秘的な空間:境内社と木曽御嶽塚

拝殿にお参りした後、右側に目を向けると、たくさんの境内社があります。二の鳥居に近い方から奥に向かって、八幡神社・赤塚神社の合殿、榛名神社、白山神社、大山阿夫利神社、疱瘡神社、三峰神社の順に並んでいます。疱瘡神社はあばたのように穴のあいた石の祠に「痘瘡神」と刻まれていたのが特徴的でした。
さらに奥へ進むと、稲荷神社の赤い祠がありました。そこから左へ向かうと、木曽御嶽塚があります。木曽御嶽塚は、小高い塚の斜面にさまざまな石碑が並んでいて、頂上には祠が鎮座しています。祠の手前には御嶽山・八海山・三笠山の山名を記した石碑があり、祠に向かって踏石が階段状に並んでいました。こうしたところに、昔の御嶽信仰の名残が感じられます。
境内社から木曽御嶽塚までの一帯は、草木が生い茂って日陰になっていることもあり、どこか不思議で神秘的な空気が漂っていました。個人的には、赤塚氷川神社の境内で一番面白かったです。

 

富士塚、そして後日談

最後に木曽御嶽塚から二の鳥居まで戻り、富士塚を見ることにしました。富士塚でまず目についたのは、石造りの鳥居です。鳥居には「浅間神社」と記された扁額があります。鳥居から奥を覗いてみると、木造の小さな社殿が目に留まりました。
さらに全体を眺めてみると、富士塚もやはり小高い塚で、斜面には富士登山の記念碑がいくつもあります。記念碑を見ていると、富士登山が一般の人々にとって一大イベントだったことがうかがえます。頂上には石造りの小さな祠があって、大きな石が階段状に組み合わさっていました。一見不安定な感じがしますが、それでもお参りする人がいたのでしょう。富士塚は道路に面しているためか、木曽御嶽塚よりも開放的な感じがしました。
ところで参拝の数日後、参道入り口の飛び地にあるケヤキの大木と、「赤塚乳房大神」と刻まれた石碑を見ていなかったことがわかりました。飛び地にあるために気が付かなかったのです。グーグルマップのストリートビューで調べてみると、大木と石碑の存在を間違いなく確認できました。でもそれを見るだけのために駐車料金を払うのはさすがにもったいないので、近くを通ったときに車窓から眺める程度にとどめておきます。

 

Lisa Aoki May 2017