慈眼寺(水判土観音)

子どものころ,大晦日の夜はよく慈眼寺を訪れた。このあたりでは「水判土(みずはた)の観音様」と呼ばれて親しまれるお寺だが,私にとっては「除夜の鐘」のお寺だ。年越しそばをすすりながら紅白歌合戦を見て,新年まであと1時間という頃に家を出る。寺に近づくころには,もう鐘を突く音が聞こえてくる。冷たい空気の中,白い息を吐きながら兄弟や両親と長い列に並び,鐘つきの順番を待つ。途中で年が明け,「あけましておめでとう」などとあいさつを交わすうちに,私たちの番だ。お堂の階段を上がり,重い丸太の縄を兄たちと握りしめ,「いち,にの,さん!」と力を込めて突くと,何重もの「ゴーン…」という重い音に,身体全体を内から外から揺らされる。この重い音で,「ああ,新しい年がきたのだ」とようやく実感したものだ。この頃はなかなか鐘つきに行けずにいるが,子どもたちがもう少し大きくなれば,一緒に行くつもりだ。
By Gwen (40代女性) 体験時期:2000年前後数年の大晦日の体験


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