小学生の頃、父方の先祖の墓がある馬蹄寺に「地獄絵図」を見に行った。 この馬蹄寺では、珍しく「地獄絵図」と「涅槃図」がセットで保有されており、年に一度、お釈迦様が亡くなったといわれる2月15日前後に、この寺の本堂に展示される。 幼心には「地獄絵図」の方が強烈で、「涅槃図」を見たことは、よく覚えていない。その地獄絵図には「地獄の落ちるとこんな目に合うんだよ」と、視覚的に小さな子供でも理解できる絵が描かれていた。鬼たちによって、ぐつぐつ煮立った大きな窯に投げ込まれている者、火の吹いた針の山を歩かせられている者、大きなまな板の上で体をのこぎりで切り刻まれている者等々、かなりグロテスクな絵図だった。にも関わらず、不思議と「怖い」とは思わなかった。幼い頃から、父に仏教童話、漫画をたくさん読み聞かせられてきたからかもしれない。 「また見に行きたい」と思いつつ、未だに再訪の機会は訪れていない。
By 黄ポプラ (40代女性) 体験時期:1970年代後半。