夢見桜

この桜本坊の創建には、桜の木が大きく関わってきます。
万葉時代の天智10年、天智天皇の弟である大海皇子は、吉野の離宮である日雄殿（ひのおでん）にて修行をしていたある日、一本の桜が咲き誇るといった夢を見ます。目が覚めた大海皇子が前方の山を見ると、冬だというのに一本の桜の木が花を咲かせていたそうです。不思議に思って大海皇子は遊め占いの判断を頼みます。頼んだのは、役行者の高弟である日雄角乗（ひのおかくじょう）でした。角乗は大峯山で行を積んだ高僧であり、その角乗の夢判断によると「桜の花は日本の花の王であり、その桜の花の夢を見るという事は、殿下が天皇の地位に就く事を暗示している」との事でした。そしてそのすぐ後に起きた壬申の乱に勝利し、角乗が述べたとおりに帝位について天武天皇となったのです。
その後天武天皇は、吉野の山で冬に見た桜の木の下にお寺を建立する事としました。それが桜本坊であり、初代住職は角乗が勤めました。
このようなお話がある桜本坊の境内には、その夢見の桜の木があります。確かにそのような夢を見て外に桜が咲いていたら、驚きますよね。吉野の山はそんな古くから歴史の舞台にもなっていたのかという事を、しみじみと感じました。

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