遊行寺

大阪生まれの身なので、中学校の修学旅行以来きたことのない、江ノ島・鎌倉をこの七月下旬に訪ねてみた。まず新宿から小田急線で江ノ島へ。日本三大弁天の一つ江島神社は最近世界遺産候補に上がった宗像神社の三女神と同じ祭神が祭られている。暑い日だが天気はよく、富士山がきれいに見えた。しかし目的はこの神社ではない。藤沢にある遊行寺だ。正しくは、一遍上人開祖の時宗の総本山清常光寺という。総本山といっても「諸国を遊行」してまわり、寺という拠点を持とうとしなかった一遍聖だから上人そのものが開いた寺ではない。訪れた時刻は夕刻、しばらく境内を歩いていると重文の鐘が鳴り、どこからか太鼓の大きく激しい音が連打され始めた。時刻は丁度5時だった。「しまった」、板碑で有名な小栗判官の墓は刻限を過ぎて見ることがかなわない。しようがなく、境内を出ようとしてはじめて気付いた、紅白の施された木枠とロープが張り巡らしてある。盆踊りの準備のようだ。大阪生まれの私は「盆」というと8月中旬のイメージだが、東京は7月なのだ。陽がまだ残る暑い中だが、藤沢の駅まで歩くこととした。バスで来たときは気付かなかったが、あちこちに遊行寺での盆踊りのポスターが貼られている。総本山と言う大寺にもかかわらず、よほど地域の人々から慕われているのだろう。一遍上人の心意気を現代に見たような気持ちに心が満ちた。
By タケちゃん60代男性 体験時期:2015年7月21日


----------------------------------------------------