遍路 四国八十八ヶ所巡礼 体験記

巡礼前日
2001年3月5日(月) 晴


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1 巡礼 前夜 沙依の巡礼記1記事一覧

2001年3月ふと思い立ち、四国八十八ヶ所巡礼に出かけることにしました。目的は自分自身と向き合うためです。行き当たりばったりのお遍路ですが、『修行の意味もある四国八十八ヶ所巡礼ならば、自分と向き合うのにもぴったり!』と思っていた当時の私。おおいに向き合いました。地図と道に・・・自分と向き合えたとは思いますが、それは八十八ヶ所巡礼後に思い返して気づいたことも多いです。巡礼中は唯々次のお寺へ行くことだ...

どこに行けばゆっくり自分と向き合えるだろうかと考えたとき、ご近所に八十八ヶ所があったのです。香川県に生まれ育った私は、四国八十八ヶ所は常に身近にありました。願い事があるわけでもなく、とりわけ敬虔な仏教徒というわけでもありませんが、敬う心がないわけでもなく、通し打ちの車巡礼ならば7〜10日で帰って来られます。どうしても急な仕事が入った場合にすぐに帰れる場所であれば、休日を挟んで10日前後なら仕事を休...

四国霊場八十八ヶ所巡礼には「5つのもの」が必要といわれます。「1.健康」「2.お金」「3.時間」「4.信仰心」「5.先達」です。1. まず元気でないと行けません。2. 意外とお金がかかります。交通費、宿泊費、食費は最低限。納経をしてもらうなら、プラス納経代金。事前の準備としてピンキリですが、納経帳と白衣、掛軸(表装含まず)もいいお値段です。3. 健康でお金があっても、お仕事が忙しいなど時間がなけれ...

あの当時は若さもありましたし、“無駄に元気”という言葉がぴったりの私でした。お金はなんとかなりました。時間は融通の利く仕事柄、帰って来られる距離内ということで問題なし。信仰心が強いわけではありませんが、尊敬の念は持ち合わせています。経験者の先達さんは周りにたくさんいるので、いろいろなことを教わってきました。先達さんのお話で一番興味深かったのは「八十八ヶ所巡礼は人生と同じ。若くても年寄りでも、一人で...

先達さんの一人に“ひとの道”にうるさい(いえ、大切にする)年配の方がいました。「どう思う?納経帳を投げてよこすのを。ひとの道を説く坊さんがそれをするって。それもお遍路さん全員にや。自分だけなら何か悪いことでもしたんかと思うけど。」と言われ、「でもお参り中は十善戒があって、怒ったらだめなんでしょ?」と。「我慢したんやけど、あまりにも失礼が過ぎるんで、さんざん説教して納経料を坊主めがけて投げつけてやっ...

お遍路用品店の店員さんが一番熱弁をふるってくれたのは、“白衣”と“判衣”でした。「今までの判衣は巡礼に着る白衣と同じ形の着物型で、背中部分に掛け軸の縮小版のように升目があってそこに御朱印をいただくものでした。(現物を見せてくれます。)ですが、亡くなった人に着せることはできず、できても背中側になるので、結局からだの上に背中側を上にして置くしかなかったんです。ですが、最近発売されたこのタイプは一枚布(...

今回の巡礼で私は納経帳1冊と、判衣2枚に納経してもらうことにしました。両親に日頃の感謝の気持ちを込めて、掛け軸をと一瞬考えたのですが、良いなと思うのは軸だけでも数万円。値札を見て瞬時に却下。軸は両親の参拝途中のものがあることだし、判衣を贈ることで良しとしましょう。小学校に上がってからでしょうか。両親がお盆休みの家族旅行を兼ねて、2、3寺ずつ八十八ヶ所の巡礼を始めたのは。子供連れの旅行ですから、行っ...

「弘法大師様は広いお心で、全ての宗教を迎え入れる。だから高野山にはいろいろな宗教のお墓があるんですよ。」と。弘法大師のお心が広いのは有名ですが、日本全国には僧侶でもお心の狭い方や、宗派に厳しい方もいらっしゃるようです。白衣の背中には“南無大師遍照金剛”と書かれていますが、宗派の違うお寺の場合、お葬式のときにその白衣を載せていると凄く嫌がる僧侶もおられるとか。祖父のお葬式のときは檀那寺のお坊さん(真...

一番札所の近所には沢山のお遍路さん向け民宿があります。朝一からお参りを始めたかったので、お遍路用品を準備してから民宿を探しました。食堂の炬燵で民宿のおばあちゃんが作ってくれた夕食をいただきます。精進料理ではなく、魚の煮付けや天ぷら、野菜の煮物など盛りだくさんなのは、しっかり体力をつけて明日からの巡礼に行って欲しいからと。寝るまでの間、炬燵に座って“お遍路さん日記”を読んで、おばあちゃんと沢山お話を...

夕方からお遍路用品店で道具を揃えていろいろ教えてもらい、民宿のおばあちゃんや“お遍路さん日記”の先達さんたちの教えをもらい“お遍路さん”の準備は万全。あとは寝て目が覚めれば、四国八十八ヶ所巡礼のスタート。気まぐれに決めたお遍路ですが、せっかく準備も整ったことですし『八十八ヵ寺全てを廻りきるために頑張ろう。』と新たな決意をして目をつむります。先達さんたちが必ず共通して言うことは「ひとの温かさに感動す...