本成寺

私の家族では、年末親戚のおじさんの家で一通り食事や挨拶を済ませたのち、近所の本成寺で年越しを迎えるのが定番でした。本成寺では毎年数百人の方が広い本堂で、昔ながらのストーブに身を寄せ合いながら語らうのが定番で、子供のころは知らないおじいちゃんがほほを赤らめてしゃべりかけてくるのがなんとも煩わしいものでした。しかし年を取るといつしか声をかけられるのではなく、こちらが声をかけるようになっており、それまで声をかけてきたおじいちゃんが何を思っていたのか、わずかながらにも理解することができたような気がします。ストーブの温かさと、甘酒の何とも言えないおいしさに、眠気を誘われながら、いつしか時は過ぎ、うつらうつら除夜の鐘が鳴り響くことが一年の最後の楽しみでもあり、さみしさでもあったのです。
おにがしま (30代男性) 2015年の大みそか


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