少し変な体験話なのですが、地方に本拠地を持つ某銀行に勤務していた時、ある支店に配属されました。まだまだ駆け出しのひょっこ行員でした。得意先回りを命じられて、まずは地元の比較的支店から遠い位置にある山間地のテリトリーを前者から引き継ぎました。その中には地域的にたくさんの札所があり、定期的にそのいくつかの札所をローテーショに入れて回っていたものでした。そして週3回は訪問する約束になっていたのが当時四国八十八箇所霊場第十三番に指定されていた大日寺さんでした。もちろん主たる訪問先はご住職宅でしたが、関連先の訪問として、必ず大日寺の宿坊も訪問する約束になっていました。宿坊には併設されていた食堂があって、お昼頃になるといつもたくさんの参拝者でにぎわっていたものでした。最初のころは、その食堂をメインで仕切られていた女性(大日寺のご住職の親戚筋)とはよく顔を合わせていましたけど、時々訪問するタイミングでお昼前後になることがあつたのでその食堂でお昼を食べていました。もちろんちゃんとお金を払ってです。ところが、ある時からその経営されている方が私がお金補払おうとしても受け取らなくなっていったのです。理由はよくわからないのですけど、たぶんお寺という特殊な環境がお寺にサービスをするため訪問している関係業者として、御接待をしてくれるようになったのはないかと思うようになりました。とにかくいくらお金を払おうとしても受け取ってくれませんでした。そのうえ、基本的にそれらの食事は参拝者のための食事ですので、非常に凝ったものになっていて、一言で言えば芸術的お食事といえます。それを毎回無料で食べさせていただくものですから、ずいぶんといい思いをさせていただきました。これはそのあとも担当が外されるまで続きましたので、数年間はその恩恵に浴したことになります。まあ、ただ飯ばかりではあまりにも居心地が悪いので、個人的に大日寺さんをお参りに訪問させていただいた折には、そこそこの額のお布施をさせていただいたことでバランスを取りました。古い記憶に残るしかし今でもありがたい思い出です。
By 永遠の旅人60代男性
時期:1980年〜1983年頃