いまから12年ぐらい前の冬、私は訳あって四国八十八か所お遍路の旅に出かけました。さすがにこの時期は普段賑わうお遍路道も人の姿はまばらで、沿道でお接待をしている地元の方もどうやら手持無沙汰といった様子で外の景色を窓の中から眺めていました。私はあちこちでミカンのお接待を受けながらやっとのことで11番札所金剛山藤井寺までやってきて参拝と御朱印を済ませると、弘法大師が悪疫退散の秘法をおこなったといういわれのある八畳岩まで登ってみることにしました。通路のような狭い山道の途中にはいたるところに撮影禁止の立て札がありましたが、八畳岩にたどり着いた私は構わず記念にとデジカメのシャッターを切り山道を再び藤井寺へと戻りました。 するとその夜に宿泊した徳島線鴨島駅近くのホテルで休んでいた真夜中、隣の部屋から金剛杖を床につき鈴音を鳴らす音が聞こえてきたのです。その響きは低く微かにではありましたが朝方まで続きました。私は眠れない夜を過ごした朝、チェックアウトで立ち寄ったフロントで昨夜の宿泊客が私一人だったことを知りました。
悪疫 (60代男性) 2004年12月
弘法大師ゆかりの札所藤井寺を参拝した夜 (第11番札所 藤井寺)関連ページ
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