分福茶釜で知られる茂林寺へ行こうと思ったのは、1冊の本がきっかけでした。高嶋修一著『東武沿線の不思議と謎』(実業之日本社刊)です。8月か9月頃にこれを読んで、東武線の行ったことのない区間を乗り鉄してみたいと思うようになりました。そして年末になってようやく実現させることができ、行き先を茂林寺に決めて東武伊勢崎線に乗ってみたのです。
茂林寺前駅からお寺までは、分福茶釜の話が書かれた案内板が道順に沿って合計13枚あり、案内板に従って話を読み進めて行けばお寺に着くようになっています。分福茶釜は子供の頃に読んだことがあるはずですが、ストーリーを忘れてしまったので、「次はどうなっているのかな?」とワクワクしながら案内板を読みました。電車で行ったおかげで分福茶釜の話を思い出すことができ、道中を楽しく過ごせました。仮に車で行ったとしたら、案内板を見落としていたでしょう。
お寺について総門をくぐると、参道の両側にタヌキの像が20体以上並んでいました。タヌキはそれぞれ違った表情を見せていて、どこかユーモラスで愛嬌があります。それぞれの台座に書かれた川柳(?)も面白かったです。
山門と、その奥にある本堂はどちらも茅葺屋根で、いかにもタヌキの里といった素朴な風情がありました。境内はひっそりと静まりかえっていて、大都市やその近郊にはない空気が漂っていました。本堂の前にそびえるサワラやラカンマキの大木も、素朴な雰囲気を作るのに一役も二役も買っています。
本堂正面左の守鶴堂には、大小のタヌキの像がたくさん並んでいました。境内のところどころにもタヌキの像が見られます。さらに、絵馬の代わりにタヌキの絵をあしらった「他抜守(たぬきまもり)」が懸かってところも見られました。タヌキは「他を抜く」から縁起が良いとされるそうです。分福茶釜にゆかりのお寺らしい光景といえます。
お参りを終えた後は、気をよくして境内を後にしました。電車で行ったことのない区間を乗って、行ったことのないお寺に足を運んで、非日常をたっぷり味わったような気がします。
Lisa Aoki Dec 2107