熱田神宮

1 町の中の聖域

熱田神宮を訪れたのは一月二十二日、もう正確には初詣の時期は過ぎていましたが、熱田神宮はまだ初詣と思しき人のでにぎわっていました。なら京都ならいざ知らず、名古屋駅からほど近い、町の真ん中にぽんと広い緑地帯があるのは、東京の明治神宮が原宿にぽんとあるのと少し似ているような気がしました。そういう場所はやっぱり不思議なもので、大通りに面している、もしくは大通りに囲まれているはずなのに一歩足を神社の敷地の中に踏み入れると、しんと静まり返って、町の中だという事を忘れてしまいそうになります。本殿までの参道は背の高い木に挟まれていると言うよりは、森の中に道があると言う方が正しいかもしれません。中にだけ漂う独特の空気に、これがいいわゆる神域と言うものなのかなと思いました。

 

 

2 事始め

 訪れたのは日曜という事もあり、神社の境内ではいわゆる「事始め」が行われていました。いくつかあるようですが、私が行った時、ちょうど社殿の前の広場に出てきたのは、空手教室の生徒さんたち。男女含めて三十人近くいたでしょうか。まだ小学生に満たないだろう子から、中学生とおぼしき子まで大中小と並んで、指導に当たっている方の動きに合わせて、シャキシャキ動いていました。驚いたのは、この寒空、広場は砂と言うよりは砂利に近いのですが、皆さん素足に道着のみ。寒空に神事でふんどし一丁と言うのがあるのを知らないではないのですが、実際に自分の目で見るのは初めてでびっくりしました。それよりも神さまの前で自分たちの事始めを見てもらうと言うのが第一にあるからこそ、できる事なのかもしれません。

 

3,宝物殿

その3、刀

須佐之男命の他に日本武尊もお祀りしている熱田神宮、それにちなんでいるのか、同行していた友人曰く、刀の奉納が多いそうです。お参りをした後、折角なので行ってみようという事になり、宝物殿に入ると、見た事もないほど大きな太刀が展示してありました。私自身が小柄なので、刀の大きさ云々は計りかねるのですが、それを引いたにしても、下手したら私の身長くらいあるのではなかろうか?(後で調べたら五尺三寸とあったので、私の身長は悠にこえています)と、思いました。いくら馬にのってバッサリと敵をなぎ倒す太刀(正確には大太刀の部類だそうです)にしても、これを扱えるだけの人物がいたのだろうかと思って、調べたら、姉川の戦いで使われたそうです。そういうものがあっさりここにある。さすが名古屋、戦国三大武将に縁のある土地、恐るべしと思いました。

 

その3、神社同士の宝物の貸し出し

神社の宝物殿と言うものを、私は初めて訪れたのですが、ちょうどその時は熱田神宮の他に、嚴島神社、赤間神宮、大山祇神社、防府天満宮から貸し出された宝物も展示されていました。嚴島神社と防府天満宮は訪れたことがあるのですが、そこの宝物を見たことはなかったので、あの神社にはこんな宝物があるのかと改めて思い出すと同時に、現地に行った時には見れなかったものを、巡り巡って熱田神宮で見ると言う事に、何やら不思議な縁を感じました。そして、美術館や博物館が所蔵品を相互に貸し出すように、神社同士もそれぞれの宝物を互いに貸し出したりするのだという事を初めて知りました。もちろん社寺が博物館や美術館へ貸し出す事は知っていましたが、主たるご祭神の異なる神社同士でこういった交流があるというのは、少し驚きました。

 

その3、天満宮の成り立ちの絵巻

防府天満宮からは、道真公の左遷から天満宮が建立されるまでの物語の絵巻が来ていました。以前防府天満宮を訪れたのは12月だったのですが、気候のせいか早い梅が咲いたのを今でもよく覚えています。当時は梅の花と道真公は想起されても、そこから天満宮が道真公を祀る場所と言う所まで思いつかなったのが悔やまれますが、道真公のおられる場所にはやはり「梅」なのでしょう。絵巻の中にも、梅の花が描かれている物がいくつかあり、その場面には必ず道真公の姿がありました。京都から防府まで行くのも遠かった記憶がるので、そこからさらに大宰府までと言うのは当時どれだけ遠かったのか、推し量る事しかできませんが、「左遷」と一言でいうには遠すぎやしないか、さらに言えば家族をおいて防人はここにいたのかとも思いました。

 

その4 嚴島神社、平家の絢爛

 平家の海運の守り神として建立された嚴島神社、その有名な踊り舞台と、海の中に立つ鳥居を見た記憶こそありますが、そこに奉納されていた宝物については、この機会があるまではまったく見たことがありませんでした。おもしろいなと思ったのはあって然るべきだと思っていた舞楽面の他に、平家より法華経が奉納されていた事でした。奉納するために紙や装丁からこだわり抜かれ、装飾も施されていて、墨も金色の物を使っていたり、それだけで美術品のような経典ですが、神社に経典を奉納すると言う事は、例えば贅を尽くした小箱が収められているように、贅を尽くして作りあげ、捧げ物の選択肢の一つとしてあったくらい、平安の貴族の生活の中には神道と仏教がうまく共存していたように思えました。

 

By Satoko Nov 2017 -


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