那須神社

道の駅の隣にひっそりと佇む古ぼけた鳥居、そこから伸びる杉の参道の奥に構えられた、丹塗りの禿げかかった山門。鎌倉の世に馳せた勇名はいずこか、那須与一ありし日もこうは荒れておるまいと一笑の種に供されるばかりのお社に、一年に一度のみ黒山の人だかりが出来上がる。新年の到来とともに地元民の打つ柏手が神さびた社に響き始め、私が訪ねた10時の頃には参道へ敷かれた筵はすっかり踏み固められていた。山門の鴨居にはいつの年代に張り付けられたものか、所々色の抜けた千社札が社の崇敬を密かに示している。幾人かの礼拝の後に自らの参詣の番へ至ると、私の視線は再び本堂の長押へと辿った。無造作に張り付けられたお札は一層その量を増し、歴史の重みを双肩に担うような錯覚を覚えることとなった。この際に宣言した求職の成功は、加護のおかげかその年中に決まる顛末となった。
なすの (20代男性) 2017年1月


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