古宮神社

私が産まれた村の古宮神社のお祭りのお話です。お祭りといっても、全国から人が見物に集まるようなお祭りではなく、氏子さんたちが収穫を祝う名もしれないお祭りです。 お社では神楽舞、村を練り歩くのはだんじりというお祭りの定番行事があります。だんじりというと全国的に有名なのは岸和田のだんじりですが、あんな立派なだんじりではなく、青年団の若い衆が2人、やっと乗れるくらいのちいさなバラック小屋のようなにわか作りのようなだんじりです。綱を引くのは村中の小学生以下のオチビさんです。そのだんじりで村中を練り歩いて、花代(寄付)を集めるのです。 村の人が花代を差し出すとだんじりの屋根に乗った若い衆が名前を読み上げ、だんじりを思い切り揺り動かすのです。 一昨年帰省したおり、だんじりに遭遇しました。 こんな小さなお祭りですからお祭りだから帰っておいでということはなく、たまたま帰省したらお祭りだったというところです。家の前の狭い道路をだんじりがお囃子もにぎやかに通り過ぎていきました。 以前に見ただんじりより少し、立派になっていました。 岸和田のだんじりよろしく提灯が屋根上に飾ってあって、だんじりも進歩したのだと面白く見物しました。女の子は肌寒い頃なのに浴衣でたすき掛けに鈴をつけて、ねぶた祭りのハネトよろしくだんじりのあとからぴょんぴょん跳ねてついていきます。 ああ、なんでもありなんだ、と、若い衆のエネルギーにエールを送りたい気持ちになりました。幼い頃の思い出の中のだんじりとはだいぶ違っていましたが、若い衆の花代を読み上げる大声やら、女の子の寒い時季のハネトの真似は、今どきの若い人は遊びもいっぱいあってこんな古臭いお祭りなんぞ興味はないだろうと思っていたのに、なかなかの活気でした。 形は段々に変わっていっても、お祭りの収穫を祝う心根には変わりはないのだと、だんじりが通るだけで家々から顔を出す人を見ながら思いました。 ちいさくてもちっぽけでも、私のこころに残る故郷の古宮神社のお祭りの一風景のお話でした。
ももんが (60代女性) 2015年10月


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