江ノ電に乗って
高徳院で鎌倉大仏以外に見どころを発見した後は、長谷駅から江ノ電に乗って鎌倉駅へ向かいました。江ノ電はICカードで乗車できるなど近代的な一面もある一方で、単線の区間があったり、油のにおいがする古い車両が走っていたりで、どこかレトロな一面もあります。また長谷〜鎌倉間では住宅の間を縫うように走っているところもあり、江ノ島のあたりとはまた違った風景が見られます。車内はほどほどに混んでいて、乗客は観光客ばかりでないことから、一般市民の足として親しまれている様子がうかがえます。さて鎌倉駅に着いたら、歩いて安養院へ向かうことにしました。
本当に正しい方向なのか? 参拝記
鎌倉駅から安養院までそれほど近いとはいえませんが、とりあえずバス通りに沿って歩くことにしました。それが一番わかりやすく、バスを使うほどの距離でもないと思ったからです。とはいえ安養院は坂東三十三観音の札所でありながら、規模が比較的小さく、地図によっては載っていないことがあります。「本当に正しい方向なのか?」大して広くない道を歩きながら、ときどき不安になりました。大町四ツ角を過ぎてしばらく歩くと、左手にお寺らしき建物が見えました。「もしかしたら…」と思って案内板に近づいてみると、そこには「安養院」という文字がありました。
閑静な空間 参拝記
山門をくぐると、バス通りに隣接していることなどを忘れてしまうくらい閑静な空間に入ります。まず地蔵堂の日限地蔵を拝みました。地蔵堂の横にはたくさんの絵馬が納められていて、小さいお寺ながらも参拝客が少なくないことをうかがわせます。後でわかったことですが、この日限地蔵には恋愛成就のご利益があるとか…。でも私は結婚しているから、恋愛成就の代わりに夫婦円満をお願いすることになるのかな?―それはさておき、その後観音堂で千手観音を拝みました。もちろんお手綱を手に取って、縁をしっかり結んできました。
宝篋印塔 参拝記
観音様を拝んだ後、飛び石に沿って観音堂の裏側へ向かってみました。すると、特徴のある形をした石塔が大小1基ずつ目につきました。右側の大きな石塔が尊観上人(安養院が移る前にその地にあった、善導寺の開山)の宝篋印塔で、左側の小さな石塔が北条政子の宝篋印塔と伝えられています。宝篋印塔は墓塔や供養塔に用いられる石塔の一種だそうですが、何とも細かな工夫が凝らされていて、面白いものを発見したような気分です。個人的には、安養院の一番の見どころといえます。このほかにも宝篋印塔の周囲には個性豊かな石碑がたくさんあります。詳しい解説があればもっとよかったのに…と思います。
あまりの違い―いや、個性
参拝を終えた後は、歩いて安国論寺へ行くことにしました。歩きながら、安養院と長谷寺(4番札所)のあまりの違いを実感していました。一方はひっそりとした小さな古刹、もう一方は国内外から大勢の観光客が集まる大規模な寺院。一口に坂東三十三観音といっても、お寺の規模や宗派はさまざまです。言い方を変えれば、観世音菩薩を本尊としているという共通点がありながらも、それぞれの札所には個性があるということになるのでしょう。―そんなことを考えているうちに、安国論寺に到着しました。この間、わずか2〜3分。