遍路 四国八十八ヶ所巡礼 体験記

巡礼3日目 平成13年3月8日(木) 晴-曇-雪 32番〜40番 (高知8+愛媛1=9)


----------------------------------------------------

4 巡礼3日目 沙依の巡礼記4記事一覧

何度も心が折れ、その度に心に添え木をしながらまっすぐに戻した昨日の巡礼。昨夜ぐっすりと眠ったおかげか、今朝には元通りの心を取り戻した私は意外と神経が図太いようです。“三十二番札所 禅師峰寺”の見上げる石段もなんのその、朝一のお寺をお参りします。禅師峰寺は海に近い標高82mの小高い丘?山? の上にあって、境内から一望できる土佐湾の向こうから朝日が輝き海を照らす光景に、思わず足が止まって見惚れてしまい...

太平洋で見る朝日は人生の中でも数えるほどですが、この巡礼の前年に高知で見た朝日は私にとって荘厳な景色と共に記憶に残っています。民家もなく、人工物は道と防波堤だけという海岸でテントを張ってキャンプをした翌朝、夜明けと共にテントから外に出ると神秘的な光景が広がっていたのです。まず驚いたのは、数百m続く砂浜に靄がかかっているのです。海の向かいが切り立った崖になっているからでしょうか。そしてその砂浜には今...

お線香を立てるのは、お墓参りのときに両親が1本の線香を立てていたり、本家の仏壇に1本の線香を半分に折って香炉に立てていたりというのを目にしてきましたが、『そういうもの。』と思い、理由を聞いたことはありませんでした。実際、線香の本数は宗派によって違うようです。四国八十八ヶ所巡礼を始めて、本堂と大師堂のそれぞれに1本のお線香を献香していました。1本のお線香を立てていると、ひとりのお爺ちゃんが声を掛けて...

納経帳は2回目3回目と巡礼を重ねたときに新しいものを用意しても良いのですが、同じ納経帳に朱印だけをいただく“重ね印“もできます。ちなみに、重ね印だけでも納経料は同じです。巡礼途中、最初に押された朱印の横に並べて、2個3個と並んでいく朱印を何度か目にして「すごい。この人、こんなにも巡っているんだ。」と感心したものです。そしてついに目撃してしまったのです。小口が朱色に染まった納経帳を。目を見開いて見つ...

お遍路をしていると、いろいろなことを教えてくれる“先達さん”がいます。お参りと納経を済ませて駐車場へと向かっていると、声を掛けてくるまたもやお爺さん。お賽銭についてのお話です。お賽銭は“奉納する”ものですが、言葉では“あげる”という表現になってしまいがちです。はたして感情はどうなっているのでしょうか…“先達お爺さん2” 曰く、「奉納するにしても、気持ちが“あげる”では失礼極まりなく、“今自分がいる...

巡礼3日目はさほど迷うこともなく、順調に進んで高知市内から四万十方面へと向かいます。四万十川の流れる茂串山の標高300m辺りに、三十七番札所 岩本寺はあります。山道を車で進んでいると、この山道のどこかで栗拾いをしたのを思い出します。小学生の頃、家族旅行と言えば「お盆の旅行ついでにお遍路」でした。香川県から足摺岬方面は非常に遠く、小学生の時はこの家族旅行の1回だけなのですが、『足摺岬で栗拾い』(実際...

栗のイガが落ちている場所の近くに車を止めたとき、山からおじさんが大きな袋を持って下りてきました。そのおじさんを捕まえて母が「うちの子はこんなにたくさん栗がなっているのを見るのは初めてで、栗拾いをしたことがないんです。少し拾っても良いですか?」と。そのおじさんは「いいよ良いよ。拾っていくといい。」とニコニコして帰って行きました。生まれて初めての栗拾い。イガと格闘しながら栗の実を取り、袋に入れていきま...

三十七番札所 岩本寺を参拝し終えると、次の三十八番札所 金剛福寺までは94q。四国八十八ヶ所のお寺間の距離が一番離れています。車で2時間ほど。歩くと約30時間、3泊4日かかるとか。“修行の道場”も終盤に差し掛かかる頃、各お寺間の距離が遠くなります。三十六番−50q−三十七番−94q(最長距離)−三十八番−74q−三十九番−30q−四十番−50q−四十一番。“足摺岬”に向かって国道56号線を走ります...

三十八番札所 金剛福寺の境内を歩いていると、初めて訪れたのですが、どうしても顔がにやけて思い出し笑いをしてしまいます。足摺岬の栗拾いと一緒に思い出の中にあるのが海水浴。瀬戸内海で育った私は、海とはぽこぽこと島があり穏やかなものという認識でしたので、延々と続く海岸線や太平洋という遙か彼方向こうに水平線が見える景色とは無縁でした。金剛福寺へ行こうという海岸線を車で移動していたとき、私は「海で泳ぐ!」兄...

「お寺に行ってくるから、あなた達はここから離れたらだめよ。妹のことをちゃんと見ておくのよ!お兄ちゃんの言うことをきちんと聞くのよ!」と言い残して両親は金剛福寺へ行き、私たち兄妹は海です。岩場の上で釣り糸を垂らした兄の足元の海に喜び勇んで立ったところ、「ばっしゃ〜ん!!!!!」全身を波にたたきつけられたのです。「泳げない…」半泣きで立ち尽くす私に、兄は「泳げるわけないだろ(笑)俺が見える場所にいろよ...

お参りを終えて納経所に行くと、長蛇の列ということはしばしばあります。車での巡礼だろう方々が大多数、バス巡礼の方々のための納経をされる添乗員らしき人、見るからに歩き遍路の方が一人か二人。早朝は待ち人が誰もいないときがありますが、日中は平均6、7組のお遍路さんが待っています。納経帳、白衣、軸の3点に納経してもらうのがほとんどで、一人あたり数分かかるのを順番がくるまで待つのですが、バス巡礼のお遍路さん十...

この3日間、約40ヶ所の納経所に行きました。納経所は本堂の一角にあったり、独立した建物にあったり、建物内部もあれば窓越しに納経してくれたりと多様で、一名から数名の方が男女問わずいらっしゃいます。納経をしてくれる方が数人いれば個人と団体で納経する場所を分けてくれているのですが、お一人だとただひたすら待つしかないのです。お寺によっては、歩き遍路の方を優先的に納経しているところもありました。並んだ順番通...

日本の社会には“並んで順番に待つ”という、世界に誇れる文化があります。しかし、優先順位というものもあります。“歩き遍路”の方には、納経の優先順位を差し上げてもよいと思うのです。車と歩きでは、あまりにも肉体的疲労度が違います。車ならば5分10分の短縮は距離があればどうとでもなりますし、夜でも疲れていても移動ができます。しかし、1100qとも1400qとも言われる遍路道を歩き続けるお遍路さんは、時間の...

ある本堂内にある納経場所では2組のお遍路さんが並んでいましたが、若い僧侶が真剣な顔で記帳をされています。『あれ、私の前の人はあきらかに大師堂へはお参りしてないよね。』と思いながらも最後尾に並んでご本尊や本堂内を改めて見ていると、納経場所とは反対の壁側に上品なおじいさんがいるでは・・・いえ、ご住職らしき人が座ってらっしゃいます。柿色のような法衣に、黄白色の衿巻。若い僧侶には申し訳ないですが、纏ってい...

巡礼3日目の打ち止めは、四十番札所 観自在寺。愛媛県“菩提の道場”最初のお寺です。発心 :最高の悟りに達しようと決心して、仏道に入ること。修行 :欲求を禁じて精神と肉体を鍛錬して仏の教えを実践し、仏道に励むこと。菩提 :修行を積み、煩悩を断ち切って到達する、仏の悟りの境地のこと。涅槃 :究極の理想の境地であり、悟りの世界。煩悩を滅却して絶対自由な状態のこと。弘法大師は「ひとには108の煩悩がある。...

宇和島まで来ると、八十八ヶ所のほぼ折り返しです。四十番札所から、明日朝一の“四十一番札所 龍光寺”まで50q。17時を過ぎたので今日はもう打ち止めですが、とりあえず車を進めて龍光寺へ向かいます。宇和島は家からは一番遠く、“ジャコ天”が有名な場所です。ものすごく美味しいんです。道沿いには“ジャコ天”の看板が立ち並んで私を誘いますが、ジャコ(雑魚)は魚ですから精進料理にはなりません。「あぁ〜。うどんが...

四十一番札所 龍光寺まで行って場所を確認した後、30分ほど離れたホテルにチェックインしてコンビニで買ったもので夕食です。食欲という煩悩にまみれながら、今晩のメニューは昆布のおむすびに海藻サラダ、わかめの味噌汁です。ジャコ天の代わりに、海鮮尽くしの精進料理風。今日は移動距離が長くて順調に進んだので、考えに耽る時間が多く、過去を振り返り、自分を見つめ直し、反省し、新しい未来を描いていたように想います。...