巡礼1日目
2001年3月6日(火)晴 1番〜20番 (徳島=20寺)
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車の中で首に輪袈裟をかけると、気が引き締まります。今から約1週間、現実を離れて自分と向き合う遍路の始まりです。お遍路用品を買ったお店では、「白衣を着ないのであれば必要最低限の礼儀として、輪袈裟(“南無大師遍照金剛・同行二人”と刺繍された首から掛けるもの)と、数珠は持ちましょう。」と教えていただいたので、輪袈裟を首から掛けて数珠を持ってのお参りです。「弘法さん、これから1週間よろしく。」と輪袈裟に手...
お遍路さんの本来の巡拝姿は白装束です。白衣で巡礼する人は、“聖なる世界を歩むもの”とされるそうです。多くの人が普段着に、上だけ白衣を羽織っています。“一番札所 霊山寺”では、パリッとした真っ白の白衣を着た人がほとんどです。小さい頃、「お遍路さんは何で白い服なの?」と聞いたことがありました。私の生活圏の中で見るお遍路さんは少しヨレッとした真っ白とは言い難い白装束で、すげ笠をかぶっていました。「昔は歩...
今回の巡礼で、白衣を着ることに抵抗がありました。いろいろな想いを抱えて四国巡礼をするお遍路さんに比べて、自分が遍路を選んだ理由が簡単すぎて、白衣に袖を通すことが失礼な気がしたのです。白衣は着なくとも、きちんとルールを守って私なりに一生懸命巡礼しようと思います。手水舎で手と口を清めて本堂へ。燈明台にロウソクを、香炉台に線香を立てて、般若心経を奉納します。我が家は真言宗ではないので般若心経はほとんど分...
順調に進んでいる“七番札所 十楽寺”で納経をしたとき、判衣の1枚に朱印の空きが見えるではないですか。『え?なんで?』という私の気持ちとは裏腹に、たんたんと納経帳と判衣2枚に納経が済んで、私の手元に返ってきます。代金を支払って、まじまじと空白が存在する判衣を見つめます。判衣の1枚に“六番札所 安楽寺”(1つ手前のお寺)の朱印がないではないですか・・・『え〜〜〜うそぉ〜〜〜〜〜〜。』絶叫です。場所は境...
十番札所辺りから次のお寺までの距離が遠くなります。四国霊場の中でも2番目に標高の高い(800m)、難所といわれる“十二番札所 焼山寺”。細い山道を車でひたすら登っても、1時間30分前後かかります。車といえども“難所”といわれるお寺を参拝して下山すると、何故か一息つけるのです。こうして今度は山側から海沿いへと向かいます。次のお寺まで1時間前後かかったかと思えば10分前後で着けるお寺が数ヵ寺続き、また...
納経をすると、そのお寺のご本尊の姿を和紙に印刷した御影(おみえ・おすがた)、15p×7p程の大きさのものをいただけます。御影をなくすのも、番号がバラバラになるのも嫌なので、納経帳に挟んでいました。10数枚の御影を挟んだ頃、納経所で「大切な御影をこんな風に挟んで(けしからん的口調)それに納経帳に段差があれば墨書もしにくいし、朱印が綺麗に押せないでしょ。御影は別に保管しなさい。」とお説教をいただき、「...
弘法大師が四国八十八ヶ所をつくったとき、番号が振られていたのかどうかも分かりませんし、“歩き遍路”でどういう感情が生まれるのかも分かりません。1200年というときを経て車という文明の利器を使った“車遍路”では、単調さで飽きがくるわけでもなく、難しさのあまりやる気をなくすわけでもなく、続けたいと思うのです。八十八ヶ所の絶妙な番号配置に、容易に進む満足感と困難の後の達成感がほどよく組み合わされていて、...
二十番札所は、ちょうど納経が終わる17時頃に参拝終了。明日朝一の“二十一番札所 太龍寺”もまた山の上です。朝から山で迷いたくないので場所を確認しようと車を走らせ、駐車場らしき広場に到着して場所の確認は出来ました。明朝はスムーズに来られるでしょう。巡礼スタートから初めての夜です。さてどうしようかと。宿泊場所を探して来た道を30分程戻りますが、宿泊できそうなホテルは見当たりません。これ以上離れると、通...
知り合いのお坊さんが八十八ヶ所を廻ったときの経験談として「心得の1つに“不殺生”があります。修行のときは精進料理です。肉も魚も断ってお参りをしました。」と言っていたのを思い出しました。メニューを開いて何を食べようかと悩みます。『修行と言えば精進料理?』私は僧侶でも修行僧でもありませんが、気分は既に修行僧。普通の喫茶店に精進料理があるわけもなく、せめて肉と魚を外したものにしようと無難にコーヒーとトー...
おなかも満たされて喫茶店で和むと、疲れがどっと押し寄せてきます。ここからホテルを探してお寺からこれ以上遠くなるのは納得できないので、車には毛布も積んであることですし太龍寺の駐車場で車中泊にしましょう。野宿する歩き遍路さんに比べると、断然快適なはず。駐車場へ向かって、さっき降りてきた曲がりくねる山道を再度登ります。『夜なので対向車が来てもライトで確認できるし、走りやすいかも。』と思っていましたが、す...
駐車場に着くとトランクから毛布を出して、寝る準備です。運転席で寝るか、助手席で寝るか、後部座席で寝るかの3択です。一番快適なのは後部座席ですが、一番無防備かもしれません。何かあったときにすぐに車を発進することを考えると、一番寝にくいハンドルのある運転席が良いわけで、運転席に決定。どこででも、どんな格好でも寝られるのが私の特技です。快適か不快かは別にして。それに親の車(大きめの普通車)を借りてきてい...
1日を振り返ると「疲れた。」が第1の感想。お寺は1番から20番まで廻りました。感想は「たくさん廻れました。やりました!」です。車遍路だから楽だと思っていましたが、駐車場から本堂までがびっくりするくらい遠かったり、階段の上り下りや坂道だったりが足にきます。まず普段、こんなに歩くことはありません。田舎に住んでいると車がなければ生活ができないので、ほとんどが“ドアtoドア”です。そして、なんと言うことで...
毛布をかぶって就寝タイム。ひとっこ一人いない山の上、なんとも不気味で夜が明けるまでは目を覚ましたくない感じです。疲れていたのか深い眠りに入って熟睡です。深い眠りの後は浅い眠りが来ます。普通に人間の睡眠サイクルです。が、しかし!緊張があるとレム睡眠に入ったとたん目が覚めてしまうのです。時計を見ると0時を回ったところ。窓から外を見ると外灯1つなく、鬱蒼と繁る木々の闇が深くて何も見えない。「朝までまだ寝...
頭まですっぽりと毛布をかぶる私。車中には、僅かな風の音と、コツコツとまるで誰かが爪先で叩いているような音がします。頭のすぐ上で振動と共に響く音が、自分を呼んでいるように思えるのです。その音に誘われるように、そっと毛布から顔を出して外を見たとき窓に両手をついて中を覗き込んでいる人と目が・・・『うぎゃぁ〜〜〜〜〜』考えただけで叫べます。間違いなく心臓が止まります。たとえそれが生きている近所のおっさんで...