貞照寺

日本人最初の女優となった川上貞奴(明治4年-昭和21年)が私費を投じて作った寺です。そのとき、本尊として祀るための仏像を作成依頼したのが、小川半次郎という仏師でした。小川半次郎。知る人は少ないと思います。生涯を仏師として過ごし、謝礼に金品は決して受け取らず、わずかな米や水だけで仕事を引き受けました。展覧会などに出品することも一切拒みました。 半次郎は僧に非ず、さりとて俗にも非ず。と言われるゆえんです。生き方としては円空や山頭火にも通じるところがありますが、この人は生涯徹底して清貧であることを貫きました。 そして45才のとき、貞奴の依頼した不動明王を造った数ヶ月後に息を引き取りました。その生き様を称して「祈りの仏師」と呼ばれています。 最後の作品である貞照寺の不動明王座像は、世の不条理に対する怒りを内に秘め、ぎょろりとした目を遠くに向けて人々を救おうとしているように見えます。作者が無名であるために、この仏像も不遇を託っていますが、遠からず日の目を見ることになるでしょう。 それ以前に見ておくと、自慢のタネになりますよ。
北風荘右衛 (50代男性) 月に1回は見に行ってます。ちょっと長めの散歩コースなので。


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