私は現在40代であるが、子供の頃、年に一度の楽しみが、八代神社で行われる妙見祭であった。何が楽しいって?順を追って説明しよう。まず、朝から小学校に登校する。これだけだと特に楽しくはないように思うかもしれない。出席を取ったら全校生徒で体育館へ行き映画観賞をする。つまらなそうと思うかもしれないが、前年公開の娯楽大作だったりするので嫌が応にもテンションが上がる。で、下校。楽しくないわけがない。家に着くと親や祖父母から小遣いをぶんどり、友人と祭りの見物に出かける。歴史ある山車「笠鉾」、暴れまわる神馬、毎年来るおどろおどろしい見世物小屋(入った事はない)、参道に並ぶ数多くの屋台、見所は様々であるが、一番はやはり「亀蛇(がめ)」である。知らない人には説明し難いが、ガメラのような物だと思っていただきたい。くるくる回るし。恐らくは四神の玄武がモチーフであろう亀と蛇のキメラであるが、本家は尾が蛇なのに対し、亀蛇は頭が蛇である(なぜか耳もあるが)。これが川原でぐるぐる回転しながら移動するのだ。ここでテンションは振り切れる。上がりきったテンションで何をするかというと、出店の華、くじ引きである。なにせ子供なので加減や引き際がわからない。気がつくと全財産を良く分からないガラクタに変え、帰途につくのであった。さて、この祭り、当時は11月18日に開催されており、市内全体で楽しむ物であった。これが変貌してしまったのは、ひとえにハッピーマンデー制度に乗っかってしまったからだろう。それまでは、「祭りなので休む!」というスタイルだったのが、「休みなのに祭りかよ」と意識が変わってしまい、年々見物客や出店が減少する傾向となった。私も引っ越してしまい、ずいぶん行ってないのだが、そんな中、昨年末に驚くべきニュースが飛び込んできた。ユネスコ文化遺産登録。まじか。このニュースを受け、今年は久しぶりに見物に行こうと思っている。願わくば、当時の活気が戻っていて欲しいものだ。いや、当時を越える活気を見せて欲しい。とりあえず、クジを100回くらい引くお金を用意しておくとするか。
矢部謙三 (40代男性) 1986年の体験と2017年の予定